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もう何年も前、私が当時所属していた会社で数日にわたる戦略ワーク
ショップのファシリテーターを務めた時のことです。昼食の最中に販売担当
役員がそのワークショップの目的について自説を披露しました
─
「顧客か
らはしぼり取れるだけしぼり取らなくちゃ」。そう言うと、濡れタオルをし
ぼるような仕草をするのです。「しぼりきったかなと思っても、さらにしぼ
るんだ。やり手のリーダーならそのコツを知ってるし、それを助ける戦略
だってある」
本人は大真面目です。私は愕然としました。われわれ企業にとって対象市
場は「小銭を巻き上げる相手」などではありません。私は心の中でつぶやき
ました
─
顧客ほど貴重な企業資産はないのに。より良い製品やサービスを
提供できるよう、企業は顧客から学ぶことに全力を上げるべきなのに。
その役員の視点は近視眼的であり、「我が社の務めは売上アップ」と信じ
て疑いませんでした。短期的にはそれで支障がないかもしれませんが、こん
なに視野が狭いのでは結局は失敗するのが落ちです。成功を維持したいと望
むなら、こんな殻は打ち破らなければなりません。
しかしあいにく「組織は成長するにつれて戦略的視野も拡げていかなくて
はならない」という自覚を持てない企業が少なくありません。こうした思い
違いを私は常々「戦略近視眼」と呼んでいますが、こんな「近視眼」しかもて
ず、自社の真のビジネスの何たるかを根っこのところで理解できていない組
織があまりにも多いのです。
コダックの事例を考えてみましょう。写真フィルム市場に1世紀にもわ ...